この作品は片手に一眼レフを構え、写真を一枚一枚撮りながら制作した。
私の祖父母が住んでいる集落は限界集落だ。村中にはたくさんの空き家が放置されている。都会にある空き家と違い皆から忘れ去られ静かに自然の波に飲まれていくその空き家たちには悲しさと美しさが混在する。 空き家の机の上には 錆びた釘や洗濯バサミ、ガラスの破片などかつての村人の生活の様子を垣間見ることができた。
そこで私は、集落の空き家を題材にした作品を作った。机の上で粘土をこねるという行為を机の上にある外部のものを 取り込む行為と定義した。 この粘土の特性を活かし、村中の空き家で粘土をこね、空き家の一部を取り込んだ。 そうしてできたある意味空き家の集合体のような塊で家を作り、そっと集落の道路に置いた。そして車にひかれ道路の一部となった空き家の塊は、自然の波に飲まれ朽ちてゆく村の空き家と重ねてみることができた。
そして、それらの写真をつなぎ合わせ木琴と鉄琴を重ね合わせたテンポ良い曲と合わせコマ撮りの映像作品をつくった。この手法をとることで一眼レフ特有のボケが背景と中心にある粘土を交互にとらえ、粘土の成長と背景との関係を上手く表現することができた。
2021/11/28,映像(3:00),(粘土,空き家の一部)